シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019

2019.4/27(sat)
5/19(sun) 6/2(sun)

アーツ千代田3331

Who's Next Visual Futurist? フューチャー・デザイン・コンテスト  応募受付は3月15日から

シド・ミード審査委員⻑
コンテスト総評

このコンテストは、個⼈的移動⼿段についての全般的コンセプトに応⽤できるような
イマジネーションを喚起するためのものでした。
発展性のあるアイデアの要請として、最⼩限の物理的な「接地⾯積(footprint=⾜跡)」を寧ろ好みました。
乗り物(ビークル)は格好いいものですが、世界の⼈⼝の60%近くが都市環境に住むようになって、
現在の⾃動⾞に代表されるような広く使われている⼤型の乗り物の将来には問題があると思います。
ちなみに、ホンダ社は多分今までで⼀番⾰新的な「個⼈的移動⼿段」⽤装置を発表しています。
以下が応募の各カテゴリーについての私の考えです。

私は、アイデアそのものと、アイデアのプレゼンテーション技法の両⽅を同等に評価しました。
コンピューターで制作された3Dイメージは特に優先しませんでした。
コンピューターは道具であって、アイデアを産み出すものではないからです。

シド・ミード カリフォリニア州パサデナ市、2019年6⽉20⽇

FUTURE DESIGN
CONTEST 受賞作品

グランプリ

TESLA社製 M-ST-001 HORNET
  • masato ezura  株式会社ModelingCafe 28歳
    「Hover Vehicle 「TESLA社製 M-ST-001 HORNET」」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • サイバーパンクな未来の乗り物をデザインしました。
      ヘリコプターとバイクを混ぜたようなデザインで現代のバイクのように誰もが気軽に所有できるような扱いという想定です。
      コックピット下に反重力装置が二つ付いており、それにより浮遊・前進する。 デザインするにあたって初めに、サイバーパンクというテーマとデザインのどこかに球体を使うことを決めました。 シンプルな構造物に機械としてのリアリティをどれだけ出せるかということを意識してデザインしていきました。

    • ■審査講評(シド・ミード)■
    • このデザインは、密集した都市環境で使用するための、最小限の「大きさ」の接地面積(footprint)のコンセプトを上手く捕らえています。
      垂直に使用される要素もあり、地表のインフラ設備上での使用から解放されていることを意味します。
      デザインは革新的で、近い将来に「反重力」技術の実現が成功する可能性が探求されています。
      また手の込んだレベルのメカニカルのディテールで、意図的に「パンク」のモチーフが表現されています。
  • 審査員賞<⽥中⼀雄選>

  • 今村 響  多摩美術大学 22歳
    「電動一輪バイク」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • 子供の頃、親に連れられて行った動物園で乗った、ゾウやラクダの背中。それらは、私の人生史上もっとも印象深い乗り物だった。
      心地よい揺れ、暖かい背中、皮膚の手触り。
      動物の背中のような温もりを感じる乗り物に乗って、広大な自然の中を旅する。そんな未来の動物園の姿を思い描いてみた。 この一輪モビリティは、動物の背中に乗っているような感触、温度、振動を感じながら移動することができる。 この乗り物に乗って、広大な土地に放し飼いされた動物たちを見に行くことができる。 人はただ跨っているだけで、AIが自動的に安全に動物たちに近づけるルートを判断し、ゆったりと走行してくれる。

    • ■審査講評■
    • 子どものころの動物園の記憶をベースに、生体の感覚を取り入れ、メンタルな乗り物とした点を高く評価する。
      造形的にも、ユニークかつレベルの高いものであり、新しい世界観を拓いている。
電動一輪バイク
  • 審査員賞<河村康輔選>

  • 植田 大貴  アニメーションのメカ、プロップのデザイン 24歳
    「ASDMSS」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • ASDMSS アスドムス
      AIの制御で自動で機動ができる小型宇宙船です。 さらに詳しい情報は作品内に直接記載させていただきました。

    • ■審査講評■
    • 未来のデザインのイメージとして綺麗な曲線や複雑さにふられる中で敢えてそこを逆手にとりノスタルジックな方向のデザインに持って行かれているのがすごくリアルでした。 デザインは常に古いもののアップデートとノスタルジックなもののリバイバルだと思うので一番リアリティを感じました。
ASDMSS
  • 審査員賞<川⽥⼗夢、福澤知浩選>

  • 大野 耕志郎  城西国際大学 19歳
    「潜水艦」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • AIによる自動運転に完全に移行した未来、その乗り物の見た目が単にカッコいいフォルムではなく生き物の形をベースにしている方が、乗り物自体に愛着が湧くし、そんな未来が来れば面白いと思ったので生き物の形をベースとした。 ウミガメを選択したのは、「未来」を考えた時に、現在は一般的に移動手段として使われていないものを描きたいと考え、「潜水艦」をモチーフとしたのがきっかけだ。
      動力源は主に太陽光。
      太陽光が届かない所を泳いでいたとしても、バッテリーが低下してくると太陽光が当たる水面まで上がってくる様になっている。
      (甲羅部分を外に出し、船としても移動可能。)
      時速は90km/h~360km/hと、普通電車から新幹線より少し速い位の速さを出すことが出来るものの、搭載されている「ウミガメAI」は感情を持っているため、ウミガメの気分によって速度は大きく変わる。 定員数は30名程度。

    • ■審査講評■
    • <川田十夢>
    • 亀型の潜水艦。見た目がチャーミング。審査員の大河原さんでいうところのタイムボカン的なテイストもある。
      人間が求める機能性を全て適えたあとの自動運転は、まさに亀が描く環世界のもとで海底を浮遊するのがたのしい。 太陽光を求めて浮かぶのもおもしろいアイデア。人任せ、機械任せの次は、亀任せ。鶴は千年、亀は万年。
      ゆったりとした時間を過ごすことができそう。

    • <福澤知浩>
    • 魅惑のデザイン、イノベーティブな未来の暮らし、WOW!、という観点で、選ばせて頂きました。
      皆さんの個性が鋭く私の心を突き刺して見入ってしまい、審査が大変でした。
      私も「空飛ぶクルマ」を通じて「誰もが空を飛べる」革新的な世界を創っていければと思います。
潜水艦
  • 審査員賞<⼤河原邦男選>

  • 大橋 匠人  プロダクトデザイナー 25歳
    「KAGO-POD」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • 都市部への一極集中が進んだ未来の日本。
      AIで相互に制御されるVehicle達が、時計仕掛けのように緻密で高密度な交通網を生み出す。
      その密集した流れの中で、大型輸送用のVehicleにはより一層、繊細かつ大胆な挙動が求められるようになる。
      「駕籠」の様にコンテナを挟み込む2つの「ポッド」は、前後の連携で自由に向きを変え、回転し、過密な交通の中、巨大な貨物を器用に運んで行く。 デザインはあくまで「働くVehicle」として過度なスタイリングを避け、印象に残りやすいシンプルかつアイコニックな造形を目指した。
      また待機状態のポッドは、二つ合わさる事で卵の様なシルエットを生み出す。
      これが埠頭などに大量に並ぶさまが「エイリアン」を思わせる光景となれば面白い。

    • ■審査講評■
    • 全ての作品を見せて頂いた総評としては、応募作品の多くは未だミード氏の手のひらから抜け出していないようで、逆に 改めてシド・ミード氏の未来を想像する目の確かさに驚かされる結果となりました。
      今回のコンテストで私は大橋匠人さんの作品を選びました。未来を見通す力は有りませんが何か心惹かれるコンセプト&デザインが気に入りました。
KAGO-POD
  • 審査員賞<⽥島光⼆、⻑⾕川豊選>

  • 時岡 翔太郎  プロダクトデザイナー 23歳
    「Mobile Architecture」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • 「Mobile Architecture 2030年の遊動する住まいとしてのモビリティ」 近年、自動運転などの革新的な技術によって、クルマの在り方や概念が変わろうとしている。 いま期待されるのは、クルマの存在意義を拡張した、まったく新しいモビリティサービスである。Mobile Architectureは、2030年の遊動する住まいとしてのモビリティとそのサービス。
      自動運転EVと、各地にある専用の集合住宅を連携したノマディックライフを提案する。
      モビリティと集合住宅は戸別にドッキングし、シームレスに繋がった住まいとなる。
      ターゲットユーザーは、自ら発信し活発に交流を求める10年後のアクティブシニアを想定。
      また、集合住宅はソーラーを載せた大きな発電装置、EVは電気を貯める蓄電池の割を担う。
      エネルギーの自給自足に向けた、あたらしい住まいでもあるのだ。

    • ■審査講評■
    • <田島光二>
    • シンプルかつ新しいデザインがいいです。
      乗りたいと思いました。
      つなげることができるのもいいアイディアだとおもいます。

    • <長谷川 豊>
    • 車を居住空間に見立てたコンセプトが面白い。
      ユニットごとに移動、自在に他ユニットと合体できるところが特徴的。
      既存の車との共存は難しいかもしれないけれども、見てみたいです。
Mobile Architecture
  • 審査員賞<北条司選>

  • 相馬 和希  ゲームプランナー 23歳
    「人力車」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • 今回、基盤として考えたのは「人力車」です。
      世界観としてブレードランナ―のようなサイバーパンクに寄りつつも、なるべく現代の風景をベースに考えました。 今回のデザインで重要な部分は「二本の脚」です。「人間が運転しないであろう」というお題に対して「人力」車としたのでどこに人力車要素を持たせるかを考えました。 ただのロボットが車を引く(ロボ力車)だとシンプルすぎる気がしたので、人間にも俥夫にも必要で、重要な「二本脚」に注目しました。
      その後、脚を基盤に考え「伸ばす」などのアイデアを追加しました。 脚の見た目に関しては、スケッチをしてかなり考えました。
      そこで、日本人は「機械に愛嬌を求める」傾向にある気がしたので、うねうねしたタコ脚のような丸みのあるフォルムで愛嬌が出るようにしてみました。
      あとは上記よりももっと先の人力車の進化を考え描いたのも載せました。

    • ■審査講評■
    • 総評・選んだポイント
    • ・いかにマンガ的で、バカバカしさや面白さがあるか
      ・スピードが出ず、早く動かない乗り物
      ・移動する間を楽しませてくれるものという観点で選びました。
      タイヤだけで動けるものを作れるはずなのに、あえて脚を残している面白さ
人力車
  • 特別賞

  • 福嶋 彩季  三鷹市立羽沢小学校 12歳
    「ビハイクルベッド」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • 将来、人間はより自然に帰っていき、飛行機や車や全ての「もの」は無くなっていくと思います。
      そうなった未来でも人は必ず「寝る」ので、唯一残る「もの」はベッドだと思います。
      そうなった未来の移動手段に、人はその唯一の乗り物であるベッドを利用して移動する様になると思いました。
      また人は人生の1/3を寝て過ごしているので、その寝ている時間を移動時間にすることにより、人はより充実した起きている時間を過ごせる様になると思います。
      (その他の説明は作品中に記載しました。)

    • ■審査講評■
    • <田中一雄>
    • 小学生のお素直な夢が描かれている点を、特に評価したい。他の作品と同列に評価できるものではないが、今回の募集対象の中で光をあてることもあるのではないかと思う。

    • <北条 司>
    • 寝てる間に動くのが面白い。
      しかし、旅が点から点に動くものと捉えられる危険性が少しある旅の、移動する時間も楽しんでほしい。
ビハイクルベッド

Over30の作品は今回コンテスト審査対象外でございますが、応募作品をシド・ミードさんにすべて見ていただき、その中から特別にコメントいただいた作品がございましたので、氏のコメントと併せて公開させていただきます。

  • Over30

  • 小西 正太  プロダクトデザイナー 32歳
    「City Slider」
    ▼ 作品解説/審査講評

    • 【作品解説】
    • 風を感じながら都市をスライドするように移動するパーソナルモビリティ

    • ■審査講評(シド・ミード)■
    • この応募作品は密集した都市環境における個人的移動手段の狙いを総合的に満たしています。 「空中浮遊」能力もあるように見受けられますが、それにより他の「輸送ユニットたち」と調和を取りながら、局部的に作動する電子によるルート管理に乗って、都市の建物の合間を飛び抜けて行くのに理想的になっています。
      この構造(configuration)デザインは高く評価しますし、さらに、同じ基本デザインを使って、二人乗りモデルを容易に製造できると思い至りました。
City Slider